SPORTS BIKES DICTIONARY

安全&軽快に乗るための自転車タイヤ図鑑
タイヤ各部名称と基礎知識

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自転車の中で唯一道路と接しているタイヤは、走行・制動性能に大きく影響する最も重要なパーツの一つ。
タイヤひとつ交換するだけで、あなたの愛車の性能は大きく変わります!
さらに、ゴム素材で出来ているタイヤは使い続けていると劣化してきてしまい、
パンクリスクが高まるだけでなく、走行&安全性能も落ちてきてしまうので要注意。
タイヤの正しい知識を理解し、自分に合ったタイヤに定期的に交換しましょう!

各部の名称

タイヤ各部名称と基礎知識

トレッド 道路面と直に接する部分。この部分に刻まれた溝は“トレッド パターン”と呼ばれ、乾いたスムーズな路面に向くトレッド パターンは溝がなく(スリック)、濡れて荒れた路面には溝があるパターンのモデルが多いという特徴があります。
ビード クリンチャー・チューブレスタイプのタイヤの両端に1周回り、クリンチャー・チューブレスホイール(リム)の内側に引っかかり、チューブに空気を入れることでタイヤがリムに固定される部分。ワイヤーで作られた硬いビートと、アラミド繊維でできた折りたためるタイプがあります。
ケーシング ラバー(ゴム)の内側にある布地でできたタイヤの骨格に当たる部分。ナイロン布地が最も多く使われ、織り込まれている繊維数によってタイヤの性能が異なり、繊維数が多いほど柔軟性の高いタイヤということになります。
コンパウンド トレッド部分に使用されているゴムには補強剤や亀裂防止剤などが配合され、この配合された素材のことをコンパウンドと呼びます。このコンパウンドの原材料配合や、トレッド各部でコンパウンドを変えることでタイヤの性能は左右されます。
チューブ タイヤの内側に入り、タイヤを膨らませる部分。内側に入っていることからインナーチューブと呼ばれることもあります。パンク時には、このチューブを修理・交換することになりますが、サイズやバルブの種類に注意して選びましょう。

タイヤの種類

クリンチャー

クリンチャー

チューブとタイヤが別々になっており、ホイールのリム部分にタイヤのビート部分を引っ掛け、その内側にチューブを収納。チューブに空気を入れてタイヤをリムに固定します。以前はツーリング用などが中心でしたが、近年では性能が高くなり、レースでも使用されています。チューブを交換することでパンク修理がしやすい点も特長です。現在発売されている多くのスポーツ自転車に採用されています。

チューブラー

チューブラー

タイヤの内側にチューブが内蔵され、タイヤを接着剤でホイールのリムに固定。タイヤの断面形状が完全に丸いため、例えばカーブで自転車(タイヤ)が斜めになった状態でもグリップ力が変わらず、路面からのショック吸収性にも優れます。全体的に走行性能に優れますが、すぐにパンク修理することが難しく、ツーリング用には向きません。レース用タイヤ(ホイール)と考えるのがいいでしょう。

チューブレス

チューブレス

形状はクリンチャーに似ていますが、タイヤの内側にチューブを入れずに、直接タイヤ内に空気を入れてリムに固定する新しいタイプのホイール・タイヤです。走行性能・グリップ力が高く、パンクした場合でも空気がすぐに抜けることが少ない利点があります。しかし、専用のホイールとタイヤが必要で、装着には慣れが必要です。

バルブの種類

仏式

仏式

ロードバイクやクロスバイクに多く採用。先端のバルブを回してから空気を入れることができます。

米式

米式

MTBに多く採用されているタイプ。自動車にもこのタイプが採用され、ガソリンスタンドなどでも入れられます。

英式

英式

買い物用自転車(シティサイクル)に多く採用。スポーツ自転車専門店では取り扱っていないこともあります。

藤井隆士さん疑問を解決!
おしえてタイヤ先生

「空気って、どのくらい入れればいいの?」、「どんなタイミングで交換すればいいの?」など、意外と知らないことも多いタイヤにまつわる様々な疑問。
世界のプロレースで多く使用されているイタリア発祥の自転車タイヤブランド“ヴィットリア”日本輸入販売元ヴィットリアジャパンのマーケティング担当の藤井隆士さんに解説してもらいました!

タイヤにもサイズがあるの?
タイヤにもサイズがあるの?

藤井/自転車タイヤのサイズには、ロードバイクやクロスバイクで「700×23C」や「700×25C」など、MTBで「26×2.1」や「27.5×2.6」などと表記され、ヴィットリアでは必ずタイヤの横に書かれています。

また、『ETRTO(European Tire and Rim Technical Organization) の略』というタイヤとリムの世界標準規格でも表記されています。ETRTO表記はリムとタイヤに互換性があるかどうかを一目で確認できるメリットがあり、例えば、ETRTO「23−622」は、23mmのタイヤ幅で622mm のタイヤビード内径を意味します。リムとタイヤのETROTO表記を合わす事で、タイヤ径の互換性を確認できます。

700や26、27.5など前に書かれている数字はタイヤの外径を表し、ロードバイク・クロスバイクではほとんどのモデルで700C(約700mm)サイズが採用されています。それに対し、MTBのタイヤ外径には26インチや27.5インチ、29インチの3サイズがあり、数字が大きいほど大きいタイヤということになります。
一方、ロードバイク・クロスバイクの23Cや25C、MTBの2.1インチや2.6インチなど後ろに書かれている数値はタイヤの幅を表します。こちらも数字が大きいほど太いタイヤになります。

ロードバイク・クロスバイクの場合、タイヤ外径は700Cでほぼ統一されているので、タイヤの幅(太さ)を選ぶことになります。タイヤが太くなるとエアボリューム(空気が入っている量)が増すことで、乗り心地や安定感が増します。また、タイヤは太くなるほど転がり抵抗が低くなる性質があり、走行感覚が軽くなります。ツーリングやロングライドには、太めのタイヤがおすすめです。しかし、ホイール・自転車本体形状によっては太めのタイヤが装着できない場合もあるので注意しましょう。

どのくらい空気を入れればいいの?
どのくらい空気を入れればいいの?

藤井/最適な空気圧のことを“適正空気圧”と言いますが、タイヤの素材や幅で異なり、それぞれのタイヤの適正空気圧は「85~130psi」というように幅を持って書かれています。これは、ライダーの体重や天候・気温、乗り方によっても適正空気圧は異なってくるためです。

多くの要素によって適正空気圧は異なってくるため、「あなたの適正空気圧は〇〇psiです」とアドバイスすることは難しいですが、タイヤの横に書かれた適正空気圧の範囲内で使用することをおすすめします。また、自分にとっての適正空気圧を見つけるためには、様々な空気圧でカーブコーナーを含む一定のコースで何度かテストしてみるのがいいでしょう。その際、最初の空気圧から5psiずつ減らしていき、タイヤが少し窪んでいるように感じたら、それがあなたにとっての最低空気圧になります。今度は逆に5psiずつ増やしていき、路面からタイヤが跳ねる感じがしたらその数値が最大空気圧となります。その中間あたりがあなたにとっての適正空気圧になり、雨の日などはそこから5psi程度減らして走行することで、より走りやすくなります。

パンクしにくいタイヤはあるの?
パンクしにくいタイヤはあるの?

藤井/一般的な自転車タイヤの場合、パンクを100%防ぐことは不可能ですが、パンクしにくいタイヤはあります。
単純に耐パンク性能だけを考えれば、トレッドゴムの厚みがあるタイヤはパンクしにくいことになります。しかし、ゴムが厚くなればそれだけタイヤが重くなり、走行性能は低下します。そこで、厚くするのではなく、素材自体パンクしにくいゴムを採用したり、特殊なナイロンなどの素材を使った耐パン性の高いベルトをトレッド下に配置したタイヤが発売されています。ヴィットリアでは、ほとんどのタイヤにこの耐パンク性能の高いベルト(PRB)がトレッドの下に配し、さらにタイヤの横からのダメージを防ぐために特殊な保護材を加えたモデルもあります。

また、どんなに高品質なチューブを使っていても、ブチル(合成化学)チューブで通常1週間すると15psi程度、ラテックス(天然ゴム)チューブで8時間すると30psi空気圧が減ると言われています。空気圧が極端に減るとパンクリスクが高くなりますので、走り出す前には必ず空気圧をチェックすることで、パンクリスクを減らすことができます。

入門用タイヤと高級タイヤは何が違うの?
入門用タイヤと高級タイヤは何が違うの?

藤井/一般的に入門用タイヤは、走行性能よりも耐久性を重視して長く使えるものが多く、高級(高価格)になるほど軽量性や走行性、グリップ性能に優れたタイヤになります。しかし、高級タイヤの場合、寿命(性能を発揮できる期間)は短く、小まめな交換が必要となります。

この走行性能ですが、タイヤの骨格にあたるケーシングによって大きく異なってきます。高級で高性能なタイヤは、より良い繊維を使い、高い密度で織り込まれたケーシングが使用されています。ケーシングの密度はT.P.I(1インチあたりの繊維総数)という数値で表され、数字が高いほどケーシング内のゴム量が少なくなり、薄く作ることが可能で、柔軟性が高くなります。柔軟性が高いタイヤ(ケーシング)は、路面との接地面が大きくなることでグリップ力を高め、さらにスムーズに転がっていきます。タイヤを選ぶ際、価格だけでなく、このT.P.I値に注目することをおすすめします。

多くのライダーにとって、150TPI 前後の折り畳みタイヤは重量・転がり抵抗・耐久性・快適性、全ての面においてバランスの取れたものになっています。
TPI値が高くなればなるほど、重量は軽くなり、転がり抵抗も低くなりますが、耐久性は低くなります。それでも、更に上級を目指すライダーは最上級のしなやかさを求めて、高いTPIのチューブラーやクリンチャーを使用しています。

ヴィットリアのタイヤはT.P.I値によって4つのクラスに区分。トップモデルのコルサシリーズでは320T.P.Iという最高の繊維数を誇り、高い柔軟性を生み出す

タイヤを交換すると乗り味は変わるの?
タイヤを交換すると乗り味は変わるの?

藤井/自転車に乗り始めて一定期間が経過するとタイヤのゴム素材は次第に摩耗し、劣化していきます。劣化したタイヤでは自転車全体の走行性能が落ち、耐パンクリスクも高くなるので、交換することをおすすめします。

また、自転車を購入した際、価格を抑えるために入門用のタイヤが装着されている場合もあります。1回目のタイヤ交換をする際にプロショップで相談して、T.P.I値などを参考にしてより高性能なタイヤを選ぶことで、自転車全体の性能をアップさせることは可能です。タイヤは路面と接している部分ですので、衝撃吸収性や走行性能などが一気に向上したことを実感できるでしょう。

タイヤを交換するタイミングは?
タイヤを交換するタイミングは?

藤井/上記の通り、タイヤは摩耗・劣化します。また、使っていないタイヤも劣化してゴム素材に細かいヒビなどが入ってしまうこともあります。
交換するタイミングは、走行距離や保管状況などによっても異なるため、「〇〇カ月したら交換」と言うことは難しいですが――目視で確認してタイヤのセンタートレッド(路面と接する部分)が平らになっていたり、ヒビや裂けている箇所があったらすぐに交換しましょう。目視で確認する際は、センタートレッド部分だけでなく、タイヤの横もしっかり確認することが重要です。

どんな点に注意してタイヤを交換すればいい?
どんな点に注意してタイヤを交換すればいい?

藤井/交換するタイヤを購入する際まず最初に重要なのが、自分の使用しているホイールに合ったタイヤの種類(クリンチャー・チューブラー・チューブレス)を選ぶこと。次に、タイヤの太さによっては、自転車のフレームに当たって走れなくなってしまうこともあるので、自分の自転車に装着可能なタイヤ幅かを確認しましょう。外径については前述の通り、ETRTO表記を確認することで間違いを無くすことができるでしょう。

タイヤの幅は「狭い=速い」というわけではありません。完全に平らで振動がない路面(トラック競技場など)では、トレッド面がスリック状(トレッドが刻まれていない)で幅の狭いタイヤが速くなりますが、実際の路面は凸凹があります。そのため、実際の路面では様々な要素が走行性能に影響するため、タイヤの幅ではなく柔軟性がもっとも重要となってきます。数年前まではロードバイクには23C幅タイヤが定番でしたが、最近では少し太めの25C幅のタイヤを装着する人も増えてきていますので、自分の自転車・使い方に合った幅の柔軟性能の高いタイヤをプロショップで相談してみることをおすすめします。

タイヤにまつわる薀蓄

サイクリスト仲間が集まったときに使える、ヴィットリア タイヤに関する雑学をヴィットリア ジャパンの藤井隆士さんに聞きました。思わず「へぇ~」となる薀蓄(うんちく)、サイクルショップで買い物中の雑談のお供にどうぞ。

プロ選手が使用しているタイヤと発売されているヴィットリアタイヤは、同じ。
プロ選手が使用しているタイヤと発売されているヴィットリアタイヤは、同じ。

藤井/2018年シーズン、18ある世界のトッププロロードチーム(UCIワールドチーム)のうち、7チームがヴィットリア タイヤを使用しているんです。さらに、日本のトラックナショナルチームでもヴィットリアのトラック用タイヤが採用されています。
世界のトッププロ選手たちが使用しているタイヤは、すべて市販品と同じもの。なかでもヴィットリアの代表モデルである「コルサ」はプロ選手たちからのフィードバックで改良が加えられ、長年プロ選手からホビーサイクリストまで多くの人に愛用されています。

ヴィットリアタイヤのゴム素材には極薄のピュアカーボンが混ぜられている

藤井/2016年にヴィットリアはカーボンナノテクノロジーによって誕生した「グラフェン」を採用しました。この新素材は、原子1個分(10億分の1メートル!)に相当する薄さで、ほぼ透明なシート状のピュアカーボン! ラバー(ゴム)にこのグラファンを加えることで、ラバーの分子間の空間を埋めて分子同士をより近くに引っ張り合う働きをします。これによりラバーがより強化され、高い性能を誇るタイヤが作り出されるのです。

ヴィットリアタイヤは職人の手作業によって作られているのは、本当。
ヴィットリアタイヤは職人の手作業によって作らているのは、本当。
ヴィットリアタイヤは職人の手作業によって作らているのは、本当。

藤井/ヴィットリアでは年間700万本以上の自転車タイヤを生産し、そのうちプロチームなどが使用するチューブラータイヤ約90万本は職人の手作業によって作り出されています。ヴィットリアの工場では、チューブラータイヤのしなやかなコットン製ケーシングにトレッドゴムを貼り付ける伝統的な作業が熟練の職人によって行われ、その長年培われてきた技術力によって多くのプロ選手から絶対的な信頼を得ています。